参/「切っ先」を考える

語る

今回は、殺陣を行うにあたって最も重要である「怪我をしない・させない」ための刀の扱いについてお話しします。

殺陣を習い始めて最初に教わることの一つに、「刀を振りかぶった際の切っ先の位置」があります。
「自分の背中側まで大きく振りかぶらないように」という注意を受けたことはないでしょうか? これは、後ろに立っている人の身体や目に、切っ先が刺さってしまう危険性があるからです。

しかし、危険なタイミングはそれだけではありません。実は、意識して刀を振って「いない」瞬間にこそ、事故の種が潜んでいるのです。

振りすぎが招く「手詰まり」と「危険」

一つ目の落とし穴は、「刀の振りすぎ」です。

必要以上に刀を大きく振りすぎてしまうと、次の動作が間に合わなくなったり、本来の軌道とは逆から無理やり刀を捌(さば)こうとしてしまったりします。
これはフォームが崩れるだけでなく、予期せぬ動きで相手を傷つける原因になります。「どこまで刀を振るか(止めるか)」という制御を常に意識しなければなりません。

振り返る時の「切っ先」の暴走

二つ目は、体の向きを変える(転換する)時の動作です。

刀を振り上げたまま後ろへ振り返る際、切っ先がクルっと相手側へ回ってしまうことがあります。これは非常に危険で、相手の頭部を強打してしまう事故に繋がりかねません。

振り返る際は、自分の頭上で無造作に刀を返すのではなく、「相手がいない側(死角とならない安全なスペース)」を通して刀を返す必要があります。

「斬る」ことよりも「切っ先」の管理を

これらを知らない、あるいは教えない教室や道場を、私は信用できません。
殺陣は「怪我をしない・させない」が基本中の基本です。指導する側がこうした安全管理を「知らない・教えない」のでは、稽古をする以前の問題だからです。

殺陣を始めると、どうしても「斬る」ことに意識が集中してしまいがちです。しかし逆に言えば、「斬る」瞬間というのは集中しているため、意外と怪我は起きにくいものです。
本当に危ないのは、意識が抜けている「移動中」や「構えの移行中」なのです。

「今、自分の切っ先がどう動いているか」を常に把握しておく必要があります。

イメージと現実のズレを修正する

例えば、上段に構えた時のことを思い出してください。
自分では「刀を真っ直ぐ上に振り上げた」つもりでも、鏡で確認すると意外と傾いていた……という経験がある方は多いのではないでしょうか?

このように、どれだけ意識していても「自分が思っている形」と「実際の形」にはズレが生じるものです。このズレが、思わぬ事故を招くこともあります。

立ち回りが始まってから終わるまで、「常に切っ先がどこにあるか」を自覚できるようになれば、安全性はもちろんのこと、刀の技術や表現力も自ずと向上していきます。
ぜひ、切っ先の位置を意識して稽古に励んでみてください。